書名 |
ハームリダクションとは何か ―薬物問題に対する,あるひとつの社会的選択 |
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筆頭著者 |
松本俊彦・他編著 |
その他著者等 |
松本俊彦/古藤吾郎/上岡陽江/樽井正義/Alex Wodak/みなみおさむ/林 神奈/鳥山絵美/牛木潤子/後藤弘子/ |
出版社名 |
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ISBNコード |
ISBN978-4-498-12994-8 |
発行年 |
2017年8月 |
判型 / 頁数 |
A5判 / 162頁 |
分類 |
臨床医学系/精神神経科学/精神医学 |
価格 |
定価2,640円(本体2,400円 税10%) |

「薬物依存症は刑務所に入っても治らない」,必要なことは処罰ではなく支援である,という著者らが公衆衛生政策としての“ハームリダクション”とは何か?について解説.

目 次
はじめに
第1章 ハームリダクションとは何か?
1 はじめてのハームリダクション:今,世界で激論中〈古藤吾郎〉
ハームリダクションをめぐる国際的なディスカッション
ハームリダクションとは
はじめてのハームリダクション:NGOでの実習
ハームリダクションをめぐる幅広い合意
2 保健問題としての薬物使用〈樽井正義〉
HIV/AIDSとハームリダクション
スイスの事例
マレーシアと台湾の事例
ハームリダクションに学ぶ
3 「危険ドラッグ・フィーバー」から考えるハームリダクション
―規制強化は個人とコミュニティに何をもたらしたか― 〈松本俊彦〉
危険ドラッグ乱用の実態
わが国における「脱法」的な薬物との戦いの歴史
なぜ危険ドラッグ・フィーバーが発生したのか
「包括指定」がもたらしたもの
規制強化が引き起こした「害Harm」とは
危険ドラッグ・フィーバーの唐突な終焉
薬物対策の2つの柱―供給の断絶と需要の低減
自己治療仮説―「負の強化」こそが依存症の本質である
第2章 海外にみるハームリダクションの実践
4 世界は違法薬物にどう対応することができるか?〈著:Alex Wodak/訳:古藤吾郎〉
厳罰主義の隆起と緩やかな衰退
厳罰主義がもたらす逆効果
厳罰主義がオーストラリアに及ぼした悪影響
健康と社会のための薬物政策
健康と社会のための薬物の許認可
健康と社会のための薬物使用センター
新しく,そして多様なハームリダクション
国際的な薬物政策の変革
治療・回復に従事することと,薬物政策を変革するための活動の共通点
アンフェアな厳罰主義
5 ハームリダクションを医療者・医療ユーザーに伝える
―カナダ・トロント市での実践から― 〈みなみおさむ〉
ハームリダクション―従来の方法と何が違うのか
なぜハームリダクションが必要なのか
クライアントの側に立って物質使用を理解する
自己治療に行き詰まった人に対する援助
いま・ここにいるクライアントにハームリダクションをどう伝えるか
ハームリダクションの応用例―「クライアントの行動を制限する」介入
6 研究者がアドボカシーを行うためにできること:バンクーバーにおける
ハームリダクション事情と研究者の関わり〈林 神奈〉
VANDUの設立と非公認SIF
インサイトとその有用性
研究者の役割
第3章 日本における取り組みと課題
7 生き延びるための居場所や関係はどこにあるのか/どうつくるのか"
当事者も,その周りの人々にも安心・安全を〈鳥山絵美〉
ハームリダクションでつながりを
困っていることが言葉になる場づくり
家は安全な場所なのか
身体のケアでつながりを
生き延びるための選択肢を増やす
オーストラリアで確認した希望
依存先を増やしていく関わり
8 「生きていなければ始まらない」―そのための居場所づくり―ダルク女性ハウスの歩み― 〈上岡陽江〉
「やめるか,やめないか」しかないと思っていた頃
ハームリダクションと出会って
薬物依存は犯罪ではない
変わっていったこと
母と子の支援,心身のケア
生きていくためのハームリダクション
9 刑事施設におけるハームリダクション〈牛木潤子〉
刑事施設について
刑事施設とハームリダクション
10 薬物使用による害を減らすために司法にできること〈後藤弘子〉
薬物関連法規とその基本的な考え方
規範違反としての覚せい剤事犯者
司法における薬物使用者
変化する司法と回復への支援
11 安心して「クスリがやめられない」といえる社会を目指して〈松本俊彦〉
薬物依存症―誤解されている病気
薬物戦争敗北宣言
ポルトガルの薬物政策
誰もが依存症になるわけではない
「ネズミの楽園」が教えてくれること
安心して「やめられない」といえる社会
おわりに〈上岡陽江 古藤吾郎〉
索引