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書名

その鎮静,ほんとうに必要ですか ―がん終末期の緩和ケアを考える

筆頭著者

大岩孝司・他著

その他著者等

鈴木喜代子

出版社名

中外医学社

ISBNコード

ISBN978-4-498-05714-2

発行年

2014年11月

判型 / 頁数

A5判 / 126頁

分類

臨床医学系/麻酔科学

価格

定価2,200円(本体2,000円 税10%)

内容

がん終末期の“耐え難い苦痛”に対して行われる“鎮静(セデ―ション)”は,ほんとうに必要なのか.長年,がんの終末期医療に携わってきた著者が,難しいテーマを検証する

目次

はじめに

第1章 がん終末期患者の諸相
【耐え難い苦痛といわれている構図を症例から学ぶ】
症例1 苦しいよ
  患者の言動には意味がある
  病気の重症度と患者の辛さは比例しない
症例2 痛くて動けない
  自身のおかれている状況をわかることが大事
症例3 痛みがとれないよ
  “悪い知らせ”で痛みが緩和
症例4 咳が止まらなくて横になれない
  正しい言葉による説明; 患者の誤った理解と医療者の誤った言葉の使い方
  病態の正しい理解と対策
症例5 吐いちゃうよ
  辛いのは誰か
【5人の患者の共通点】
  キーワードは“ズレ”
【患者の話を聞き,患者の判断を尊重】
【食欲低下と喪失感】
【がんの辛さをもたらすもの】
【ある裁判記録に見る耐え難い苦痛】
  死前喘鳴は“息苦しさ”の表現ではない
  死前喘鳴は“患者の苦しみ”の表現ではない
  “痛いだろう”“苦しいだろう”という思い込みの医療行為が患者を苦しめる
  “治療の中止”の希望は,みている家族の辛さから
  患者の意思はどこに?
  家族の辛さの受け止め方
【ガイドラインの落し穴】
【耐え難い苦痛症状の対策】
症例6 咽頭癌で嚥下困難な状況で腫瘤から出血
症例7 肺癌の縦隔リンパ節転移病巣が気管に浸潤し気管狭窄
症例8 骨盤転移による痛みで座位姿勢がとれない
  がまんすることとは違う“辛さに耐える力”
  症状緩和における自律支援

第2章 がんの苦痛症状の緩和の実際?がんの痛みを中心に?
【身体的な苦痛の感覚と情動】
  “痛い”と感じると同時に,その状況に応じた情動(感情)を伴う
  痛みの感じ方に影響を与える因子
  感覚に対する治療
  情動に対する治療
【がん終末期患者の心情】
  がん治療の中での“死の衝撃”
  医療側のペースで進むがん治療
  置かれている状況に適応できないパニック,高度のうつ状態
【さくさべ坂通り診療所における医療用麻薬使用の実状】
  痛みの緩和を目的とした医療用麻薬の使用量
  死亡前7日間の医療用麻薬の使用量
  STASを用いたがん性疼痛緩和の評価
  コミュニケーション力を意識レベルの代理指標に
  新たなケアモデルの確立

第3章 緩和ケアの医療的視点
【緩和ケアの定義(WHO)】
【QOLとは何か】
  QOLを構成する要因
【がん終末期と健康関連QOL】
  一般に,患者のQOLは疾患の治癒により改善する
  がん終末期患者のQOLは低下するのみか?
  QOLと健康
  QOLと喪失
  健康の新たな概念
  QOLはその時々の患者の満足度
【最後まで維持改善が可能なQOL要因】
  スピリチュアリティ
  スピリチュアルペイン; スピリチュアリティの喪失
  日常の中にある“生きる意味”
  スピリチュアリティの指標
  疾患の治癒に匹敵する“その人であり続けること”
【アイデンティティを維持するためには】
  言語によるコミュニケーション
  患者の求めに応じたコミュニケーション
  自律支援; 患者の自己決定を支える
  コミュニケーションのベクトル
  患者の語り“ナラティブ”からケアが始まる
  耐え難い苦痛とコミュニケーション

第4章 耐え難い苦痛
【鎮静ガイドラインに書かれている“耐え難い苦痛”】
【耐え難い苦痛に関するガイドラインの問題】
【緩和ケアの質と耐え難い苦痛】
  検証されていない“治療抵抗性の耐え難い苦痛”
  耐え難い苦痛は必然なのか
【耐え難い苦痛に込められたメッセージ】

第5章 鎮静ということ
【鎮静のガイドラインに記述されている“鎮静”】
  ガイドラインのもつ危険性
  倫理的基盤の正当性
【浅い鎮静】
  コミュニケーションができる程度の意識の低下とは?
  “鎮静”の二つの問題
  耐え難い苦痛の一断面
  意識をぼんやりさせる浅い鎮静が新たな混乱を招く
【深い鎮静】
  安楽死と深い鎮静
  深い鎮静は人としての死
  精神活動,人格活動の停止が意味するもの
  耐え難い苦痛の感情的な論議
【鎮静で耐え難い苦痛が緩和されるのか】
  ガイドラインで推奨している薬剤は,全てに鎮痛作用はない
  オピオイドを“併用して良い”という意味は?
【苦痛の評価で問題になること】
  非言語的コミュニケーションによる評価の意味
  鎮静による症状緩和の評価法の問題
  家族や看護師に求められて医師が処方している現実

第6章 安楽死

第7章 患者本人の意思

第8章 昏睡と鎮静

おわりに
文 献