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書名

科学的思考への誘い ロスマンの疫学 第2版 ―原題:Epidemiology; An Introduction 2nd edition

原著者

Kenneth J. Rothman

筆頭著者

矢野栄二・監訳(帝京大学大学院公衆衛生学研究科)

出版社名

篠原出版新社

ISBNコード

ISBN978-4-88412-372-7

発行年

2013年9月

判型 / 頁数

A5判 / 368頁

分類

社会医学系/環境医学、産業医学、疫学

価格

定価2,750円(本体2,500円 税10%)

内容

【監訳者序文】

本書はEpidemiology; An Introduction(2nd edition)の翻訳である。監訳者
のうち矢野は80年代にHarvard School of Public Healthに留学した際に、
Rothman教授の疫学講義を受講する機会に恵まれた。以来彼が説く「疫学」とい
う「推論の科学」に魅了され今日に至る。こうして本書翻訳の機会に恵まれたこ
と、そしてその内容を衛生学・公衆衛生学・社会医学を志す、わが国の研究者や
学生・実践家と広く分かち合えることを大変うれしく思う。

本書の副題にはAn Introductionとあるが、内容は決して初心者向けではなく、
中~上級者向けの教科書になっている。したがって、疫学のまったくの初心者が
取り組むにはやや難解な部分も含まれている。直接本書が対象とするのは、衛生
学・公衆衛生学・社会医学系の大学院生教育を想定している。しかし、本書で展
開されているのは、「科学的に真実に近づくための原則論」であり、疫学を専門
とするもののみならず、広く科学的研究を行うものや、その成果を利用する実践
家においても求められる「常識」である。まさに本書の中でRothman教授もいうよ
うに、疫学は「常識」なのだが、その「常識」をマスターするには努力が必要な
のである。直訳すると、本書の題は「疫学入門」となるが、入門コースの教科書
であると誤解を与えるのは著者の意図にはずれると考え、邦訳題を少々ひねった
ものにした。ご批判の筋もあろうが、寛容願いたい。
本書の各所には、世間で広まっている疫学に対する誤謬に、Rothman教授の鋭い
メスが入れられている。これに従い、従来の疫学用語で表現しにくい言葉もいくつ
か登場してきた。原則的に、疫学辞典第5版(日本疫学会翻訳)を踏襲したが、
Rothman教授の意図を汲みきれないと判断したものについては、あえて新しい訳を
与えた部分もある。この点については、広くご意見を仰ぎたい。また、原書が発刊
された後、いくつか訂正箇所が指摘され(Oxford University Pressのホームページ
http://www.oup.com/us/companion.websites/9780199754557/errata/ に、訂正一覧
が掲載されている)、それ以外にも翻訳過程で明らかになった訂正箇所があり、本
文中で注釈を添え訂正した。なお、各章末の問題については、同じくホームページ
上に「解答例」が掲載されているので、併せて参照されたい。

この第2版では、疫学と公衆衛生の歴史、感染症疫学の2章が新しく加わり、より
充実した内容となった。ただし、Rothman教授自身が第1版のまえがきで、こういっ
たトピックを加えて網羅的にしたら、意図した本と異なってしまっただろう、とい
った趣旨のことを書いている。また、それだけでなく既存の各章においても、本質
的には大差のない微妙な表現の変化から、傾向スコアのような数ページにわたるト
ピックの追加まで、多かれ少なかれ新規に書き加えられている。
『ロスマンの疫学』日本語版は、監訳の矢野が第1版、第2版通じて全体の指揮を
とり、主に第1版は橋本が、第2版は大脇が中心となってまとめた。今回監訳するに
当たり、第2版で追加された箇所のみならず全面的に改訂した。誤訳や不適当な表現
があれば、すべて監訳者の責任であり、ご指摘等いただけたら幸いである。
本書によって、Rothman教授の「科学とはこういうものだ」という考え方を、1人
でも多くの方と共有できたら、というのが監訳者の願いである。先に記したように
衛生学、公衆衛生学、社会医学を学ぼうとする学生はもちろんだが、研究者・実践
家を含め保健医療に携わる仕事をしている方々に広くお勧めしたい。本書における
科学の考え方を知っておくことは、いわば人の生命や健康に関わる仕事をする者と
しての身だしなみともいえるであろう。忙しい仕事の後、風呂上りに一杯飲みなが
ら、肩を張らずに気楽に本書を楽しんでいただければ、と願う次第である。

2013年8月30日
矢野栄二
橋本英樹
大脇和浩

目次

 第2版 まえがき・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3
  日本語版第2版への序文・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・5
  監訳者序文・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・6

  第1章 疫学的思考の紹介・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・11
  第2章 疫学と公衆衛生の先駆者たち・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・19
  第3章 因果関係とは何か?・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・41
  第4章 疾病発生と因果的効果の測定・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・61
  第5章 疫学研究の種類・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・101
  第6章 感染症の疫学・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・155
  第7章 バイアスへの対処法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・175
  第8章 偶然誤差と統計の役割・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・207
  第9章 単純な疫学データの解析・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・227
  第10章 層化データによる交絡の制御・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・243
  第11章 交互作用の評価・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・275
  第12章 疫学分析における回帰モデルの利用・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・293
  第13章 臨床現場における疫学・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・325

   付表・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・354
   原本訂正一覧・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・356
   索引・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・357
   監訳者/訳者一覧・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・366