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書名

運動とメンタルヘルス ―心の健康に運動はどう関わるか

筆頭著者

明治安田厚生事業団・監

その他著者等

永松俊哉

出版社名

杏林書院

ISBNコード

ISBN978-4-7644-1133-3

発行年

2012年8月

判型 / 頁数

B5判 / 146頁

分類

保健・体育/体育学一般

価格

定価3,630円(本体3,300円 税10%)

内容

近年,我が国では精神疾患による患者数が急増しており,地域や職域ではその対策が急務となっている.一方,WHO はうつ病性障害が2030年には「疾病や障害による社会負担要因」のワースト1位になると予測している.メンタルヘルスの悪化が世界規模での健康課題となることはもはや時間の問題といえる.
不安,抑うつ,ストレスといったメンタルヘルスの問題に対しては,心理学や精神医学の領域からのアプローチが一般的に知られているが,今日ではその予防・改善策の一つとして「運動」の効果にも期待が寄せられている.運動の効用に関する新たな学術的知見も国内外を問わず多数報告されつつある.本書は,そのような背景を踏まえ,運動とメンタルヘルスの関係を概観し,心身の健康増進に向けた提言を行いたいとの思いで企画したものである.
第1章では「運動とメンタルヘルス」の関係について,脳科学,体力科学,スポーツ心理学,精神医学の領域における最新の研究成果を紹介し,今後の研究の方向性について提言する.第2章では公益財団法人明治安田厚生事業団体力医学研究所で得られた研究成果を基に,身体活動・運動・スポーツを用いたライフステージ別のメンタルヘルス支援について概説する.第3章では体力医学研究所で開発し現場で実践した運動プログラムを紹介する.
研究成果を健康づくりの現場に導入することは意外と難しい.このことは,健康科学の調査研究に携わる人,あるいは健康づくりの実践に関わる人にそれぞれ共通する認識ではなかろうか.その一方で「科学的根拠に基づいた健康づくり:evidence based health promotion」の重要性も今日では広く知られるようになった.
研究成果を健康づくりの現場にて応用実践すること,すなわちより多くの人々がエビデンスに基づいて効率よく健康づくりに励むことは,健康で活力ある社会を目指す上で今後ますます重要になると思われる.本書はそのような心身の健康増進に取り組む方々(学生・大学院生・研究者,地域・職域・学校の保健衛生担当者,精神保健の医療スタッフ等)の活動の一助になれば幸いである.

目次

第1章 総 論

1-1 運動とメンタルヘルスに関する研究の動向
1.はじめに
2.メンタルヘルスに及ぼす運動の効用
3.メンタルヘルスの維持改善に寄与する運動の内容
4.まとめ-課題と展望

1-2 メンタルヘルスと脳機能の関係-前頭前野におけるコントロール・評価・動機づけの機能-
1.はじめに
2.欲求と報酬
3.脳の「報酬」処理システム
4.脳の「情動」処理システム
5.メンタルヘルスと脳
6.「愛」の脳メカニズム
7.「懐かしさ」の脳メカニズム
8.「感動」,「自尊心」,「身体バランス」の脳メカニズム
9.まとめ-メンタルヘルスにとって重要な前頭前野のコア領域-

1-3 運動と脳機能の関係
1.はじめに
2.機能画像を用いて観察した全身運動時の脳活動
3.運動と学習・認知
4.運動と情動
5.運動と脳のエネルギー代謝
6.運動の記憶(手続き記憶)
7.運動野の可塑性
8.まとめ

1-4 運動・スポーツのメンタルヘルス維持改善効果-心理的視点から-
1.はじめに
2.メンタルヘルスの内容
3.身体活動と抑うつ
4.身体活動と不安
5.一過性運動の心理的効果
6.定期的な運動実践が肯定的感情に及ぼす影響
7.運動実践とQOL
8.運動への過度な依存
9.まとめ-運動実践とメンタルヘルスの改善に関する研究の今後-

1-5 精神医学における運動の役割
1.はじめに
2.精神科リハビリテーションにおける運動
3.精神科治療における運動
4.まとめ

1-6 メンタルヘルス対策としての運動の意義と方針
1.はじめに
2.精神疾患に対する運動の効用
3.運動とメンタルヘルスに関する新たな視点
4.まとめ

第2章 各論:運動を用いたライフステージ別のメンタルヘルス支援
2-1 幼児期
1.はじめに
2.就学前児童におけるメンタルヘルスの診断・治療
3.就学前児童のメンタルヘルスの決定因子
4.就学前児童におけるメンタルヘルスの評価方法
5.SDQ による一般小児の精神発達のスクリーニング
6.就学前児童の運動・身体活動・体力と環境因子の関連
7.就学前児童の運動遊びはメンタルヘルスに有効か?
8.幼児のSDQ 指標の関連因子
9.運動遊びはメンタルヘルスに有効か-予備的プログラムの開発-
10.まとめ-今後の展望-

2-2 青年期
1.はじめに
2.青年期における身体の変化
3.青年期の発達課題と心をめぐる諸問題
4.学校ストレス
5.青年期のメンタルヘルスに及ぼす運動の影響
6.高校での運動部・スポーツクラブ活動とストレスおよび気分との関係
7.運動・スポーツ活動へのソーシャル・サポート
8.まとめ

2-3 成人期
1.はじめに-成人期の抑うつは社会的課題-
2.身体活動は抑うつを予防するか
3.運動は抑うつを改善するか
4.まとめ


2-4 高齢期
1. はじめに
2.高齢者のこころの健康問題
3.高齢者のうつ予防の意義
4.高齢者のうつの要因
5.高齢者のうつに対する予防・支援
6.高齢者における運動とうつの関係
7.うつ傾向者に対する運動の効果-われわれの研究から-
8.まとめ


2-5 メンタルヘルスの評価尺度
1.はじめに
2.自己評価尺度
3.まとめ


第3章 具体的な運動実施方法
高齢者にお勧めのプログラム
 高齢者の元気アップ!体操
 高齢者のぐっすり眠れる体操
女性にお勧めのプログラム
 就寝前のヨガストレッチ
アクティブに動きたい方にお勧めのプログラム
 気分爽快!ヒップホップダンス