書名 |
成人の高機能広汎性発達障害とアスペルガー症候群 ―社会に生きる彼らの精神行動特性 |
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筆頭著者 |
広沢正孝・著 |
出版社名 |
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ISBNコード |
ISBN978-4-260-01100-6 |
発行年 |
2010年11月 |
判型 / 頁数 |
B5判 / 192頁 |
分類 |
臨床医学系/精神神経科学/精神医学 |
価格 |
定価3,740円(本体3,400円 税10%) |

今こそ、成人の高機能広汎性発達障害、アスペルガー症候群とはいかなるものか、真剣に問われなければならない時代といえよう。本書では当障害をもつ大人たちに焦点を当て、職場や家庭など社会における彼らを生き生きと描写し、その精神行動特性について、学問的な裏付けをもってわかりやすく解説した。精神医療に携わるすべての人に読んでほしい著者渾身の意欲作。

第I部 はじめに-広汎性発達障害をめぐる問題
1 高機能広汎性発達障害への注目をめぐって
2 成人における高機能広汎性発達障害とは?-特にアスペルガー症候群とは?
3 高機能広汎性発達障害をめぐる種々の問題点
1 誤診の問題
2 誤解の問題
3 個のあり方と価値観の問題
4 苦悩の理解をめぐる問題
4 本書の執筆目的
第II部 成人の広汎性発達障害をどのように考えるか
-特異的な脳の発達と自己の発達を視野に入れて
1 症例提示
2 発達的マイノリティの考え方
3 広汎性発達障害の特徴を説明する代表的な概念
1 心の理論(theory of mind)の障害と感情の読み取りの障害
2 中枢性統合の弱さと執行機能の障害
4 高機能広汎性発達障害者の生きている世界
1 Folk physics領域の認知の世界
2 隣接現実(Nebenrealität)の世界
5 高機能広汎性発達障害者の自己,自己感,および自己イメージの特徴とは
1 一般者の自己,自己感,および自己イメージの生成
2 隣接現実内自己のあり方
3 自己イメージの理解に向けて
4 高機能広汎性発達障害者の自己感の実態と彼らの生き方
6 第II部の総括-第I部の問題提起との関連から
第III部 社会の中の高機能広汎性発達障害者像-彼らの苦悩と精神行動特性
1 職場での精神行動特性
1 人の気持ちを読めない人に見える
2 場の空気を読めない人のように見える
3 暗黙のルールがわからない人のように見える
4 気持ちが自然に通じ合えない人のように感じられる
5 自分というものがない人のようだ
6 言っていることがよくわからない人である
7 きわめて不器用な人に見える
8 応用が利きにくい人のようだ(経験化不全)
9 機械のような人・正確な人・大真面目な人に見える
10 とても頑な人に見える
2 家庭での精神行動特性-結婚生活を中心に
1 愛情がない・冷たい人に感じられる
2 自分というものがない・言うことがコロコロ変わる人に感じられる
3 ひとりで生きている・一緒にいても虚しい人である
4 びっくりさせられることが多い人である
第IV部 精神科を訪れる高機能広汎性発達障害者-彼らの精神症状の特徴
1 症例提示
2 Folk psychology領域の認知様式との出会いと持続的な精神症状
-精神症状の記述に向けて
3 適応不全と知覚過敏・身体感覚へのとらわれ
1 常に存在し続ける身体感覚へのとらわれ
2 身体感覚へのとらわれと不快感・不安感(精神症状)
3 身体感覚へのとらわれと抑うつ感
4 一過性の精神病様症状
1 妄想をめぐって-一方向的な情報の流入と被コントロール感(被害的思考)
2 生命感情の低下と深いうつ
3 生命感情の変動と双極性障害様の病態
5 自己の解体とパニック
1 自己の機能の停止・麻痺(昏迷)
2 自己の機能の撹乱(運動爆発)
3 自己の断片化と自己機能の障害(タイムスリップ現象)
第V部 高機能広汎性発達障害者をめぐる今後の問題
1 広汎性発達障害の過剰診断をめぐる問題
-男性はみな広汎性発達障害に見えてしまうことがある
1 PDD型自己から離れた,広汎性発達障害概念の拡大
2 あらためて広汎性発達障害の範囲とは?
2 高機能広汎性発達障害と天才の問題-天才喪失と天才礼賛の時代
1 広汎性発達障害と天才との関係
2 20世紀;Folk psychology優位の時代と天才に対する評価の実態
3 天才礼賛の影で
3 おわりに
索引