老年者は成人の老いたものではないことは、いろいろな疾患の症候には壮年者と異なり、かなり特異的なものがあることから、明らかである。たとえば、脳以外の臓器の疾患により容易に意識障害が出現すること、また薬剤の副作用が他の年齢層と異なるところのあることなどである。本書は、老年者に多い重要な疾患について、比較的特異的な事柄を中心に簡潔にまとめたものであり、まれな疾患は除外してあるが、日常診療に事欠くことはないと考えている。一方、内科以外の領域についても重要なものを幾つか加えてある。老年者の診療には広くmedicalな立場で対応する必要があり、すべての領域を念頭におくことが望まれ、本書はこれを考慮しており、日常診療に役立つものと信じている。