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書名

エンドトキシン研究 6 ―より深い理解をめざして

筆頭著者

日本エンドトキシン研究会・編

出版社名

医学図書出版

ISBNコード

ISBN978-4-87151-320-3

発行年

2003年12月

判型 / 頁数

B5判 / 169頁

分類

臨床医学系/外科一般

価格

定価4,400円(本体4,000円 税10%)

内容

去る2002年11月29,30日に大阪で開催された第8回日本エンドトキシン研究会の講演内容をまとめた「エンドトキシン研究6」が,昨年に続いてここに刊行されることになりました。ご多忙にもかかわらず執筆いただいた講演者の方々,研究会の運営にご尽力いただいた上に,本書の刊行にご指導とご協力を賜った小玉正智会長,事務局ご担当の谷 徹教授に研究会開催を担当した当番世話人としてこの機会に心からお礼を申し上げます。種々の菌体成分が動物の自己防御機構を活性化する現象は,多くの研究者の興味をひき,さまざまな視点から研究されてきました。リポ多糖は,極めて強いその活性とエンドトキシンショックに関わる臨床上の重要性のゆえに間違いなくその様な物質群の代表格であり続けています。1980年代にエンドトキシンの活性本体リピドAの構造が明らかにされたことによって,一時は原因物質側の理解が先行した状態になりましたが,20世紀の終わり近くのToll-like receptors(TLRs)の発見によって事態はまた大きく進展しています。類似の蛋白質群が種々の細菌やウィルスの成分を認識し,異物に対する防御体勢をととのえる自然免疫の体系が実態として把握されたのです。現在はレセプターTLR4によるエンドトキシンの認識が,そこに関与する種々の因子の役割とともに一層精密に解析され,その知見は,時間をおかずに臨床研究にも考慮されています。本書にはそのような背景を持つ最新のエンドトキシン研究の知見が詰まっています。一方,鋭敏な検出と定量の手段としてエンドトキシン研究を大きく支えてきたリムルス試験は,昨年が実用化から30年目に当たることを記念して,その概観と展望が本書にまとめられています。リムルス反応の生化学的研究が,カブトガニのもつ独自の自然免疫系の全貌解明へとつながった経過は興味深いものです。また,本書には残念ながら収録されていませんが,昨年の研究会直後にMDPに対する細胞内のレセプターNODが特定されたことも,MDP研究に携わった筆者には印象深いことでした。以前から感じられていたペプチドグリカンとMDPの活性の質的な違い,MDPによるエンドトキシンの活性増強などの現象が,これによって説明されるのでしょう。同時に,動物に備わった自然免疫の体系の複雑さ,周到さには驚かされます。エンドトキシンの作用にも,まだまだ複雑で精緻な未知の仕組みが隠されているのかも知れません。日本エンドトキシン研究会の活動がその様な背景解明のための強い基盤となることを祈る次第です。

目次

第1章 特別寄稿
1. Limulus Testの30年/2. ディーゼル排気微粒子によるエンドトキシン関連肺傷害の増悪
第2章 エンドトキシンのかかわる自然免疫の基礎研究
1. LPS受容体を介したカブトガニ顆粒細胞の分泌機構/2. エンドトキシン(LPS)認識分子機構/3. Toll-like receptor4の膜発現に重要なN-グリコシル化におけるMD-2の役割/4. 骨吸収を促進する炎症性サイトカインと細菌菌体成分の作用機構
第3章 リピドAの構造とその生物機能
1. 脂質部に多様性を有するリピドA類縁体の合成:活性の制御と立体構造の予測/2. Porphyromonas gingivalis由来リピドA分子による細胞活性化機構/3. ペスト菌LPSの培養温度による構造変化とその病原性発現における意義
第4章 エンドトキシンの作用に影響する因子
1. マウスの菌体成分応答に対するMDPのプライミング作用:MDPのToll-like receptor(TLR)2非依存的活性/2. アミノ酸置換による殺菌ペプチド・ヒトcathelicidin hCAP18/LL-37誘導体のLPS中和作用の増強/3. LPS刺激時のマクロファージにおけるiNOSおよびCOX2発現におよぼすエタノールの作用/4. エンドトキシンで惹起される酸化ストレス:その生成機構における必須微量元素の役割/5. 加齢による全身性シュワルツマン反応の増強とCD8+CD122+αβT細胞(intermediate CD 8細胞)の関与について
第5章 炎症におけるCD14のはたらき
1. 尿路上皮細胞上の膜結合型CD14の発現と炎症反応惹起における意義/2. マウスCD14に対する中和抗体のエピトープ解析/3. Toll-like receptorを介するNF-κBの活性化に必須なマウスCD14分子の機能的部位
第6章 臨床症状におけるエンドトキシンとそのレセプター
1. バングラディシュにおける小児下痢患者血清中から検出される高濃度のエンドトキシン/2. 敗血症性ショックに対するNOS阻害剤の循環作動薬としての効果/3. 敗血症性急性肝障害に対する抗炎症性サイトカインInterleukin-11の治療効果/4. 単球上Toll-like receptors発現から見た消化器外科周術期におけるLPS刺激に対するサイトカイン産生能に関する検討